●九州ロービジョンフォーラム

 

柳川リハビリテーション病院・学院

開設10周年記念一般公開シンポジウム

2000九州ロービジョンフォーラム in 柳川

「視覚障害児への支援」

 

2000年7月23日(日)

柳川リハビリテーション病院

 

 

主催:九州ロービジョンフォーラム

共催:医療法人社団高邦会

柳川リハビリテーション病院・学院

(財)読売光と愛の事業団

連絡先:九州ロービジョンフォーラム事務局

 (柳川リハビリテーション病院眼科)

 TEL: 0944-72-0001 FAX: 0944-72-1127 
E-mail:lowvision@kouhoukai.org 

 

 

ごあいさつ

 

 

 九州ロービジョンフォーラムは、眼科医、視能訓練士、看護婦(士)、教育、福祉、保健や企業の方々が個人で参加され、視覚障害者への支援を視覚障害者や家族の皆様と共に考え、共に悩み、支援しています。そのためには視覚障害者支援の専門家を育成する必要があり、ロービジョンケアの普及を目的に、平成9年北九州に開かれた第67回九州眼科学会時に専門家向け講習会を行いました。その後佐賀、大分と本年5月沖縄での第70回九州眼科学会時に同講習会を開催いたしました。平成10年からは読売愛と光の事業団のご援助をいただき、一般市民の方々を対象に公開シンポジウムを九州各地や山口で開催し、視覚障害者の現状と支援の必要性を訴えております。本年も2月に山口市、5月に那覇市で行いました。今般、高邦会柳川リハビリテーション病院・学院開設10周年記念行事の一環として柳川の地で「九州ロービジョンフォーラム」を開催いたします。

 今回のフォーラムは「視覚障害児の支援」と題し、小児にしぼりました。わが国におけるこの分野の第一人者の先生をと考え、柳川療育センター施設長山下文雄先生(前久留米大学小児科教授)、川崎医科大学眼科教授田淵昭雄先生(日本ロービジョン学会理事長)と愛知県心身障害コロニー中央病院眼科部長唐木 剛先生をお招きし、ご講演をいただきます。旧知の先生方ではありますが、私個人としても今日お話しを聞かせていただけるのは望外の喜びです。

 また、福岡盲ろう者交流会を2階カンファレンスルームにて合わせ開催いたします。私共も視覚障害と聴力障害をもつ方々へも積極的に支援していきたいと思っております。九州ロービジョンフォーラム事務局も本年1月より柳川リハビリテーション病院に移動いたしました。この度のフォーラムは同病院眼科・視覚リハビリテーションの施設案内を兼ねさせていただており、眼科訓練室に視覚障害者用機器やパソコンなどがあります。

 各メーカーにお願いし、7階にて視覚障害者用福祉機器を展示しておりますので、ご利用のほど宜しくお願い申し上げます。

 

九州ロービジョンフォーラム


代表世話人 高橋 広

 

 

公開シンポジウム

「視覚障害児への支援」

会場:柳川リハビリテーション病院7階会議室

 

 

講  演: 12時〜3時


柳川療育センター施設長/山下文雄
   「小児の脳機能障害症候群」


川崎医科大学眼科教授/田淵昭雄
   「異常眼球運動と視覚障害」

 
愛知県心身障害者コロニー中央病院眼科部長/唐木剛

「中枢性視覚障害児に対してどう対応するか」

 

 

パネルディスカッション:3時〜4時 
「視覚障害児へ支援」


司会:柳川リハビリテーション病院眼科部長
(前産業医科大学助教授)/高橋 広 

パネリスト:


  柳川療育センター施設長/山下文雄 
  川崎医科大学眼科教授/田淵昭雄 
  愛知県心身障害者コロニー中央病院眼科部長/唐木剛 
  国立函館視力障害センター指導員/山田信也 

 

 

福岡盲ろう者交流会: 
2階カンファレンスルーム  10時〜12時 

 

 

機器展示:

7階展示場  10時〜4時30分 

 

 

講演1:「小児の脳機能障害症候群」

柳川療育センター施設長/山下文雄

 

 

 聞き分けがなく言葉遅れのこども、走り回り多動で困る子、知能指数のわりには学習ができない子、ことば・運動・すべての面で発達おくれの子、けいれんのある子。
 小児の成長・発達過程でよく出会う問題点は、いつまでたってもことばがでない・運動がおくれる
多動(注意集中欠陥)である・ききわけがない。このようなことが親を困らせ、不安にする。大きな障害としては、運動の麻痺(脳性麻痺を代表とする)・てんかん・知的発達のおくれがある。これらはすべて脳機能障害(不全)症候群としてまとめることができる(Denhoff)。
 脳障害の部位がちがうために主症状の差がでてくるのであるが、いずれの場合もお互いに脳の密接した部位で障害が起こっており、それら部位間に密接な連絡があるから、症状の合併も多く、互いに似たような症状を伴いやすい。お互いに”親戚すじ”のできごとなのである。
 いずれの場合にも外界情報の入力障碍および入力した情報の統合障碍があって、そのような困った問題が発生する。

 そのなかで最近話題になっている病態、自閉症・学習困難児と注意欠陥障害(他動)症をとりあげて、その発生機序や特徴、対処法などを解説する。

 本日はロービジョンがいかに認知やコミュニケーションを障碍するかという解説があるが、視力は聴力とならんで情報入力のもっとも大切なものである。聴力障害児や盲目児のように視・聴覚障害がある児が”自閉症児”にきわめて似た症状を呈することは良く知られている事実である。
(A)自閉症では自閉症を特徴づける有名な、「3徴候(三つ組み症状 Lorna Wing のTrias ) 」を解説し、それが視床を中心とする情報統合障碍らしいことと、最近明らかにされたロンドン学派の研究「 心の理論(人のこころが読めない)を紹介する。
(B) 学習困難児とは、教育的視点からの概念である。その歴史を紹介し、例をあげ、現在その取り組み、支援がどうなされているかを紹介する。発生には視覚の統合のゆがみが大いに関係する。
(C)注意欠陥障碍(多動)症は、学習困難児のなかの30ー40%をしめ、すぐキレル子が多く、社会的に問題を起こす場合も多い。その取り組み、支援の現状を紹介するが、幸いこのカテゴリーでは、リタリンという薬物が著効を示すことが多い。

 

 

【略歴】1927年大牟田市生まれ 
1950年九大医学部卒
米国ノースウエスターン大小児科研究員
飯塚病院小児科医長 九大講師
1967年 久留米大学医学部小児科助教授 
1972年〜1992年 同小児科教授(大野城自閉症児援助施設・子どもセンター理事長) 
1992年久留米大学名誉教授・米国PediatricSociety名誉会員 
1992〜1993年 重症心身障害児施設
ゆうかり学園長
1994〜1998年 久留米大学医学部看護学科長
1998年〜 重症心身障害児施設柳川療育センター施設長

 

 

講演2:「異常眼球運動と視覚障害」 

川崎医科大学眼科教授  田淵昭雄 

 

 

 視覚障害児(以下、障害児)の早期発見の有用な手がかりの1つに異常な眼球運動がある。異常というのは、「眼球が動かない」、すなわち目の前を通過する物を追わないなど「追視が見られない」場合と、「視線が定まらず」、「いつも無目的に眼が動く」など動きすぎる場合の両方の状況をさす。このような例は何らかの視覚障害によっていることが多いが、本来は視覚は良いのに眼球運動系の障害のために視線が定まらず、二次的に視覚障害に陥っている例もある。そのため、異常な眼球運動を発見したとき、私達はその原因を次に示す3つのステップで系統的にどの要因が最も関与しているかをまず検討している。
1)視力などで示される角膜から水晶体、硝子体、網膜、視神経そして大脳の視覚中枢に至る視路のどこかに障害がないか(これを視覚の入力系という)。
2)その視覚中枢に入った情報が、どんな形をしているのか、どんな色をしているのか、あるいはどの方向に動いているのかなどを判断したり理解される。

 そして過去に経験した情報(記憶)と照らし合わせて、当人にとって意味のある情報であるかなど認知する作業が行われているか(これを視覚の統合系という)。
3)最後に、その情報に興味を示して視線を目標物に向けたり,固視したり、あるいは追視しているか(これを視運動系(出力系)という)。
 この1)〜3)までのステップのうち、1つ以上が障害されると結果として「見えていない」「見えない」ことになり、さらに異常な眼球運動を示す。そこで、次に私達が行う重要な検討事項は、1)〜3)の全てのステップにおいて、これから発達しようとしている未熟な小児において、それぞれのステップがどの程度に関連しあっているか、を明らかにすることである。
 たとえば、先天性に虹彩がない無虹彩症(瞳孔が開いたまま)の乳児は、眼に届く光を全く遮ることが出来ないため、羞明が強く明室では開瞼しないうえに、じっと固視するのが困難になり、いつも眼がウロウロと動く、いわゆる眼振様の異常眼球運動を示す。本児はなお悪いことに、しばしば視力発達に最も重要な網膜の黄斑部の発達異常を伴っていることがあるため、視力はますます悪く発達しない例が多い。しかしもし、生後間もなくから虹彩つきコンタクトレンズで眼球への入光量を減じてやると、異常眼球運動は少なく視力の発達も良好となる。早期発見と早期治療が1)の視覚の入力系を正常に発達させ、そして2)の統合系と3)の視運動系を正常に発達させる。
 また、視覚の網膜・視神経・視覚中枢に至る通常の視路の発達が先天性の何らかの理由で悪いために、動物に見られるような他の経路で見ていると思われる極めてまれな例がある。本児は、眼前に示された目標物が動かない場合は全然興味を示さず見ているという視反応を示さないが、視野内に動いているものがあると反応してその方向に眼を動かす(これは丁度,ウサギの眼と同じ)というものである。そのため通常の視力は極めて悪いが、逆に意識的に眼や頭を動かしてものを見ている。
 明らかな1)および2)の視運動系異常の代表は先天性眼球運動失行症である。これは無意識の状態では眼は全く制限なく正常に動くのに、ものを見ようとすると眼を動かすことが出来ない。そのため、視力自体は幸い悪くないが、ものを見るのに激しく頭を動かして見るというやはり特殊な例である。その他、先天眼振や中脳・小脳性異常眼球運動も臨床上多く経験する。
 このように異常な眼球運動は視覚障害と密接に関連していることを理解した上で、眼球運動の記録による分析を行い、早期治療による相互の関連(悪循環)を断ち切る努力が必要である。

 

 

【略歴】1943年神戸市生まれ
1968年 神戸大学医学部卒業
1970年兵庫県立こども病院 
1972年川崎医科大学助教授(眼科学)
1985年ケースウエスタンリザーブ大学神経内科 眼球運動神経生理学研究所留学 
1989年〜 川崎医科大学・教授(眼科学)
1992年〜川崎医療福祉大学・教授(感覚矯正学科)
1995年〜同大学・感覚矯正学科・学科長 
【現役職】
日本ロービジョン学会理事長、日本神経眼科学会理事   
日本弱視斜視学会理事、日本小児眼科学会理事
日本臨床視覚電気生理学会理事、日本眼科学会評議員
日本脳波・筋電図学会評議員 

 

 

講演3:「中枢性視覚障害児に対して
     どう対応するか」 

愛知県心身障害者コロニー中央病院

眼科部長 唐木 剛 

 

 

 重複障害児とは、何を指すのであろうか。純粋に眼球に障害を持つことによって、視覚障害を有する児以外を指すと考えたい。実際には眼球に障害を有して、視覚障害を有する故に、心身の発達がスムースにいかない例は多い。しかし今回は、おもちゃを見せても見えているとは思えない児で、眼球などに明らかな原因を見いだせない症例を、重複障害児として、対応方法などについてお話したい。特にてんかん・脳性麻痺・精神発達遅延を合併する、視反応の乏しい症例(中枢性視覚障害児=視反応発達遅滞児)を、どのように理解し、どのように対応すべきかなどを、演者の愛知県における経験をもとに紹介したい。 

 

 

【略歴】1981年名古屋大学大学院卒業
1981年愛知県心身障害者コロニー中央病院眼科
1986年米国ジョンホプキンス大学ウイルマー眼研究所留学 
1990年名古屋大学眼科講師 
1993年同大学助教授 

愛知県心身障害者コロニー中央病院眼科部長
1995年リハビリテーション室長兼務 

 

 

 

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