第11回

視覚障害者の現状とその対応

 

 平成8年の厚生省調査では、身体障害者手帳(視覚障害)保持者は31万人で、ロービジョンケアの対象となる方々は100万人といわれていますが、その実態はよくわかっていませんでした。そこで、北九州視覚障害研究会(眼科医、視能訓練士、看護婦、教員、福祉や行政の関係者でつくる勉強会)では病院眼科での視覚障害者の実態を明らかにするため、平成9年2月の1か月間に北九州市内19病院眼科に受診した患者調査を行いました。

 調査では2万2117人の患者から602人(2.7%)の視覚障害者が通院しており、1か月の平均通院日数から病院眼科には約5%の視覚障害者がいると推測しました。7割以上が日常生活に困難を感じている視覚障害者、つまりロービジョンケア対象者であることが判明しました。これらの方々はとくに、移動や情報において不自由を感じられています。良い方の眼の矯正視力が0.1未満になると、極端に日常生活、歩行や読書などが困難となります。また、中心暗点では歩けますが、読書が困難です。

 一方、求心性視野狭窄では歩行と読書の両方が難しく、非常にご苦労されていることが明らかになりました。このように、病院眼科には日常生活に困った患者さんが多数いらっしゃいます。

 従来の眼科リハビリテーションは「失明の告知」から始まり、「歩行・日常生活訓練」へつなげるものです。その場合、患者は医療から見放されたと勘違いし、医療から離れ、患者の心理状態が失望期、否認期、不安・混乱期、解決への努力期を経て受容期になってようやく教育・福祉での訓練開始に至るため、無為な時間を要しました(図)。

 

 

 このなかで、障害を克服しようと思った方が眼科リハビリテーションを受けていました。しかし、眼科医が患者の治療中に、早期に、適切にロービジョンケアを開始すべきです。眼疾患の病状から考え、視覚的困難が予想されたり、患者が視覚的困難さを訴えた時点からロービジョンケアを導入すべきだと確信しています。

 眼科医によるこのようなケアをプライマリロービジョンケアと呼んでいます。そして、さらに視覚的補助具やケアが必要と判断した場合、眼科医の下で、視能訓練士、看護婦(士)やメディカルソーシャルワーカーなどの基礎的ロービジョンケアを開始すべきです。ここまでが医療内で行い得るロービジョンケアです。

 看護婦(士)などが日常生活の支障度を聞いたり、福祉サービス情報を提供したり、簡単な歩行の介助法を指導することは十分に可能です。そしてその後、各種補助具の日常生活での使用訓練は歩行訓練士、盲学校教員や職業指導員に依頼できます(実践的ロービジョンケア)。

 このようなロービジョンケアシステムを行うことで、従来の眼科リハビリテーションではほとんど不可能とされていた仕事の継続が80%以上の視覚障害者で可能となりました。そして、さらに高年齢化が進むわが国では、視覚障害をもつ高次脳機能障害や肢体不自由などの重複障害が増加することが予想されおり、内科医、外科医、リハビリテーション医や産業医と理学療法士や作業療法士などの協力を得ながら、包括的なリハビリテーションが求められています。

 このため視覚領域でもより進んだ高度な訓練(先端的ロービジョンケア)が必要です。しかし、視覚障害者の抱える問題は医療だけでは決して解決できないのは自明のことです。それゆえ、医療以外の視覚障害児・者にかかわっている教育・福祉関係者とも積極的な交流を行い、 広範なチームアプローチを行うことにより、視覚障害児・者のQOLが飛躍的に向上するものと思われます。このような目的をもって、日本ロービジョン学会は本年4月に発足しました。

 

 

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