第12回(最終回)

介護でも役立つロービジョンケア

 

 いよいよ最終回となりました。今回は、実際のロービジョンケアについてご紹介します。これらは高齢者の方々への介護にも大いに役立ちます。

 眼鏡が基本で、次にルーペや単眼鏡で両眼の矯正視力が0.1未満になると極度に日常生活が困難になることが、北九州市内19病院眼科の視覚障害者実態調査で明らかになりました。そのためにも、まず適切な眼鏡、作業目的に合った眼鏡をかけるのが原則です。白内障手術で眼内レンズを挿入した場合でも、目的によっては眼鏡が必要です。とくに、視覚に問題がある場合は、屈折矯正されたきれいな像をルーペ、拡大読書器(図1)や単眼鏡(望遠鏡)で大きくしなければ、なんの意味もありません。ぼやけた像を拡大してもさらにぼやけを大きくするだけです。

 

図1 拡大読書器

 

 照明は明るく、明るさによって視力が変化することは古くから知られています。同じ人でも明るいところでは視力はよくなり、暗いところでは悪くなります。例えば、夜の街灯では視力が0.6であるものが、明るい戸外では1.7くらいまでにあがるといわれています。また、工業技術院によれば、新聞活字を見るとき60歳代は20歳代の約3倍の照度が必要で、小さな文字ほど、さらに多くの照度が必要と報告されています。このように視力の悪い高齢者では明るい環境が必要となります。したがって、ルーペを使う場合でも、ライト付きのものの方が見やすいといわれるのもうなずけます(図2)。

 

 

図2 ライト付ルーペ

 

 室内や手元を明るくするのは原則ですが、高齢者にとっては過度に光量を増すと、羞明(まぶしさ)すなわちグレアのため、かえって見にくくなってしまうこともあります。また、人の陰、とくに自分の陰で手暗がりになることもあり、照明の位置や食卓での座席の位置を考えたりする必要があります。

 アメリカのライトハウスで買ってきた電球(Chromalux)は、次にお話するグレアの原因となる500nm以下の光が含まれていませんので、眼に優しく、コントラストがつき見やすいと好評です。インターネットで検索したら日本でも手に入れることができることがわかりました。便利な世の中になりました。この便利さはみんなで共有すべきと考え、コンピュータ教室も開く準備をしています。

 

○コントラスト増強と羞明(グレア) 防止

 コントラストをよくするには第一に明度差(白黒)をつけ、ついで彩度(あざやかさ)や色相(補色)に差をつけると見やすくなります。白内障や眼底疾患では白紙に黒文字より黒紙に白文字(白黒反転)の方が見やすく、高齢者においても同様です。拡大読書器は文字や写真などを拡大し、白黒反転も可能です。最近のコンピュータやコピー機にも白黒反転機能がついています。

 話しは少し違いますが、コンピュータにはスキャナーで読み取ったり、音読する機能をもつものもあり、ハイテクは私たちの日常生活を大きく変えつつあります。21世紀はどんな機器が作られるか楽しみです。しかし、ちょっとした工夫、たとえば階段の上と下にコントラストのあるテープ(白)を貼るだけで、楽に階段の昇降ができるようになります。視野を拡大したいなら縮小ルーペを使用するのも一考です(図3)。要は私たちのアイデア次第です。

 

図3 縮小ルーペ

 

 グレア防止には遮光眼鏡が有効です。これはもともと、網膜色素変性症患者の暗順応をよくする目的の補装具ですが、ほとんどの眼疾患や高齢者にも大変有用です。普通のサングラスでは光の全波長を遮断するので暗くなりますが、遮光眼鏡はグレアの原因となる500nm前後の光や眼に悪い紫外線をカットします。黄系の遮光眼鏡を用いればコントラストがあがり、視力がかえってあがる場合もあります。また、コンピュータやテレビの画面を見るときに遮光眼鏡を使用すると、大変楽になり、作業能率があがります。

 

○日常生活や歩行訓練の第一歩は眼科から始まる

 日常生活や歩行訓練は、主に教育や福祉施設で行われています。最近は眼科治療中でも日常生活や歩行で支障が生じたり、生じる可能性ができたら速やかに訓練を開始すべきであると考えられています。また、高齢者も見えなくなると必ず眼科を受診します。したがって、ここからロービジョンケアを始め、視機能を最大限に用い、日常生活や歩行訓練することでQOLは向上し、自立が可能となり、仕事も継続できるようになります。

 多くの人々は入所ではなく通所や訪問訓練を求めており、地域に密着したケアが重要です。そのため福祉や教育と緊密に連携した包括的ロービジョンケアを展開しなければなりません。

 

○ロービジョンケアは心のケアから

 このように述べてきたロービジョンケアは、まず高齢者や視覚障害者がなにに困っているか、なにがしたいのかを、聞くことから始まります。同じ目線の高さで、一緒に悩み、考えましょうという姿勢が大切です。

 眼の使用訓練(中心外固視訓練)、ルーペや単眼鏡訓練や歩行訓練は決して楽なものばかりではありません。したがって、高齢者や視覚障害者の方々の強い動機や希望がないと訓練は続きません。励まし、勇気づけ、希望を共有しながら歩んでいく必要があります。

 ロービジョンケアの最終目的は日常生活の自立、社会的・経済的自立ですが、まずはルーペを使用する人や訓練が必要な人への心のケアから始めなければなりません。ご愛読ありがとうございました。ロービジョンケアは日本ではようやく本格的に展開されるようになってまいりましたが、まだまだ地域差が大きいのが現状です。そのため私たちは日本ロービジョン学会をつくりました。では、また。

私への連絡はh-takahashi@kouhoukai.orgで、

またホームページ(http://www.kouhoukai.org/lowvision/)を開設していますので、参考にしてください。

 

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