第4回

白内障はだれでもかかる加齢現象

 

 白内障の7割以上が老人性白内障で、他の白内障には糖尿病白内障、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患、薬剤毒性白内障(ステロイド白内障、向精神薬性白内障)や放射線白内障などがあります。最も多い老人性白内障は、明らかな原因がなく、加齢性変化による後天性の水晶体混濁です。

50歳をすぎると50〜60%に白内障があり、60歳代では70%、70歳代で80%、80歳代では90%以上に発生しているといわれ、ほとんどすべての人が大なり小なり持つことになります。この水晶体は、嚢、皮質と核から構成され、水晶体嚢は前嚢(上皮細胞)と後嚢(基底膜)に分けられます(図)。

 

図 前眼部の構造

 

 皮質は歳をとってもたえず若い水晶体線維が供給されていますが、水晶体核は年をとるにしたがい、大きくなり硬くなります。このため水晶体の弾力性は失われます。網膜にピントを合わせる調節は、水晶体の前後に突出しようとする弾力性によって起こる生理現象です。

 この調節力は年をとることで減少します。これが老眼です。この水晶体核の硬化がさらに進んだものが核白内障といわれる状態で、老人性白内障でよくみられます。もうひとつ多い老人性白内障のタイプは後嚢混濁で、水晶体上皮細胞が水晶体線維を形成することを中断し、増殖して後嚢下に進み、重層化した腫大な細胞となり、その結果混濁となります。このような白内障の発生機構について、現在その詳細は不明ですが、日々研究されており、近い将来解明されるでしょう。

 

○安全で日帰り手術も可能になった眼内レンズ

 したがって白内障の薬物治療は根本的には現代医学では困難です。そこでもっぱら外科的治療が行われています。古くから水晶体を硝子体内に落下させる手術が行われていましたが、近年水晶体を眼内から摘出する手術が行われ、昭和50年ごろは水晶体を水晶体嚢ごと摘出する全摘出術が盛んに施行されていました。

 その当時は、術後の矯正法としては眼鏡をもっぱら使用していました。片眼の白内障では左右のレンズの度数が違い過ぎ、左右の像の大きさが異なるため装用できません。コンタクトレンズの進歩によりこの問題を解決できました。高齢者にとってコンタクトレンズの取り扱いは難しく、連続装用のコンタクトレンズが開発されました。

 しかし、寝たきりの高齢者の場合、長期に装用し続ける例もあり、角膜感染症が多発しました。一方、眼光学的には眼鏡よりコンタクトレンズ、コンタクトレンズより眼内レンズの方が優れていることは明かですので、眼内レンズの開発が盛んに行われ、材質もここ数年飛躍的に発達しました。

 水晶体嚢外摘出術から超音波乳化吸引術になり、傷口も約3mmと小さく感染の危険も少なくなり、無縫合手術も可能となり、乱視の発生も少なくなりました。しかし、水晶体を取ったのですから調節能力はもう永遠にありません。

 したがって、高齢者の場合多くは1m先のテレビやお孫さんにピントが合うように計算し、眼内レンズの度数を決めます。この場合、遠くも、手元もピントは合っていません。一方、就労年齢層では5m先の遠方にピントを合わせますので、近用眼鏡は必要です。場合によっては中間距離用の眼鏡も使います。

 このように眼内レンズの度数は各自のライフスタイルに合わせて決定します。現在の白内障手術は安全で日帰り手術も可能ですので、自分が日常生活上不自由だなと感じたら、視力に関係なく手術をすればよいと断言できる時代となりました。

 しかし、なかには糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症などの眼疾患のため、術後視力回復の困難な例や全身的に手術ができない方もいらっしゃいます。このような場合は眼科リハビリテーション(ロービジョンケア)の対象となり、工夫をすれば多くの例では日常生活は可能となります。このロービジョンケアについては詳しく後述いたします。

 

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