悪玉脂肪酸情報ページ
国際医療福祉大学大学院 教授 
柳川リハビリテーション病院 神経難病センター エクゼクティブアドバイザー   安徳 恭演

☆第36回 悪玉脂肪酸とメタボリック症候群(平成17年8月23日更新)

悪玉脂肪酸は、メタボリック症候群の指標か?最近メタボリック症候群の基準が発表された。1)腹囲(男85cm超、女90cm超)2)高血圧 3)高脂(中性脂肪)血症 4)低HDLコレステロール血症 5)空腹時高血糖(110mgdl超) これらのうち3つ以上満たせばメタボリック症候群である。さて、この基準で使われる5つの項目と赤血球膜ヘキサコサン酸の関連を示唆する研究成果が、順天堂大学医学部循環器内科の研究者グループにより発表された。対象は、健康診断受診者352名である。基準に使われる項目のそれぞれについて、その項目を満たす人と満たさない人を比べると、いずれの項目でも、満たす人は満たさない人に比べ、赤血球膜ヘキサコサン酸(C26:0)が有意に高値となっていた。また、メタボリック症候群に該当する人はそうでない人に比べ、赤血球膜ヘキサコサン酸の値が有意に高値となり、満たす項目が増えると赤血球膜ヘキサコサン酸がより高くなっていた。この研究結果は、単独の赤血球膜ヘキサコサン酸の測定によりメタボリック症候群が診断できる可能性を示唆するものである。悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸は、メタボリック症候群の病態に深く関わっているようである。[20057月開催の日本動脈硬化学会より.] 

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☆第35回 悪玉脂肪酸とセサミン(平成17年7月5日更新)
悪玉脂肪酸は、セサミンで抑えられるのか?最近、ゴマに含まれるセサミンという物質が、健康によいとのことで話題になっている。その薬理作用の中に、ペルオキシソームの脂質の代謝をよくすることも含まれて語られている。ここでいう脂質とは、ペルオキシソームにおいてのことだから、極長鎖脂肪酸ということである。文献上もセサミンはペルオキシソームのβ酸化を促進することが報告されている。そのため、理論的にはセサミンの摂取により、極長鎖脂肪酸は減るのではないかと思われる。ただ、私の調べた限りでは、セサミンの摂取により、極長鎖脂肪酸の量が減るというデータは示されていない。極長鎖脂肪酸には、β酸化という減らす代謝と合成系の増やす代謝がある。その両者の合算により、増えるか減るかが決まる。そのため、β酸化が促進されても必ずしも極長鎖脂肪酸の量が減るとは限らない。合成系が亢進すれば、相殺されてしまうからである。今後の研究の成果を見守りたいと思う。[参考文献:Biosci Biotechnol Biochem, 2005 Jan; 69(1):179-88. Lipids, 2001 May; 36(5):483-9. J Agric Food Chem, 2001 May;49(5):2647-51.]
       
☆第34回 悪玉脂肪酸と脳・心血管障害の発症(平成17年6月1日更新)
悪玉脂肪酸が多くなると、動脈硬化でおこるとされる脳・心血管障害発症のリスクが高くなるようである50歳代の赤血球膜ヘキサコサン酸(悪玉脂肪酸)の高い人たちと低い人たち、計683人を平均3年弱経過を追ったところ、7例の動脈硬化によると思われる脳・心血管障害(不安定狭心症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、脳梗塞)が発症し、いずれもヘキサコサン酸の高い群に属する人たちだったというデータが今年の循環器病予防学会で発表された(発表者:明治安田生命塚本浩介医師)。また、3524人で検討した結果、赤血球膜ヘキサコサン酸増加がある人では動脈硬化の危険因子(高血圧、血清脂質の異常、糖尿病、肥満、喫煙など)の数が多いことを示唆するデータもあわせて発表された。この研究の結果は、赤血球膜ヘキサコサン酸(悪玉脂肪酸)が増えると、脳梗塞や、心筋梗塞などの重篤な動脈硬化による疾患がおこりやすくなることを示唆している。 ヘキサコサン酸を下げる食品などでの対策が、これを食い止めるのには有効と思われる。[2005年 第40回日本循環器病予防学会より]
          
☆第33回 悪玉脂肪酸と脂質の過酸化(平成17年5月9日更新)

悪玉脂肪酸が脂質の過酸化を促進するメカニズムが解明されつつある以前、悪玉脂肪酸の蓄積する副腎白質ジストロフィーの患者さんの血清中ではLDLが酸化されやすくなっているとの論文を紹介したが、今回の論文は、そのメカニズムを提示するものである。NADPHオキシダーゼという酵素があるが、悪玉脂肪酸は、この酵素を活性化させ、その結果スーパーオキサイドアニオン(ラジカルの一つ)を増やし、それにより脂質の過酸化が進む。ということの証明がなされている。つまり、悪玉脂肪酸(極長鎖飽和脂肪酸)が増えると動脈硬化の原因とされる、真の悪玉、酸化LDLコレステロールが増えるということである。悪玉脂肪酸は、それ以外の過酸化が関与するいろんな病気に関与している可能性が大である。[参考文献 Cell Biochem Funct. 2005 Jan-Feb;23(1):65-8.]

           
☆第32回 悪玉脂肪酸分析方法と副腎白質ジストロフィー(平成16年4月8日更新)
現在、副腎白質ジストロフィーの確定診断は、組織中の極長鎖飽和脂肪酸の分析を行い、その増加を検出することによってなされている。特に、そのスクリーニングには血漿ないしは、血清が材料とされている。私は、以前所属していた国立の医療機関において、高速液クロマトグラフィーによる分析診断法を開発したが、数年にわたって他の医療機関から分析を依頼されていたことがある。その間、いくつかの偽陽性例、偽陰性例を除外していった経験がある。それらのデータは、民間検査会社または、大学の研究室で、ガスクロないしガスマススペクトロスコピー(GCマス)を使って、出されたデータであった。この原因については、前処理も含めた方法の中に、精度を落とす要因があるとしか考えられない。これは、ガスクロ、GCマスで検出できなかった副腎白質ジストロフィー患者のグリセロリン脂質での極長鎖脂肪酸の増加が、高速液クロマトグラフィーでは検出された、初期の我々の研究成果から、明らかである。副腎白質ジストロフィーの診断には、やはり、精度の高い高速液クロマトグラフィーによる分析を使うべきである。〔参考文献 Neurology, 1984; 34: 1499-501:  Clin Chim Acta, 1987; 169: 121-6
           
☆第31回 悪玉脂肪酸とT型糖尿病(平成16年2月17日更新)
糖尿病で、成人中心におこるU型糖尿病にくらべ数は少ないが、T型糖尿病というのがある。インスリン依存性のある糖尿病で、インスリン注射がかかせなくなる。さて、このT型糖尿病の小児期の発症のリスクが、生後一年間のタラ肝油の摂取で、減少するとの報告がある。ノルーウエイでのケース・コントロールスタディによるものである。タラ肝油はEPADHAなどが多いので、これらの多価不飽和脂肪酸が関与しているのではないかと推測されている。しかしながら、タラ肝油には高不飽和脂肪酸以上にモノ不飽和脂肪酸(LC-MUFA)が多い。LC-MUFAは、糖尿病に関係のある極長鎖脂肪酸(悪玉脂肪酸)を減少させる。今回のタラ肝油の効果には、LC-MUFAが関与している可能性が高いと思われる。今後、インスリン受容体と悪玉脂肪酸の関係が、研究すべきテーマとして考慮されねばなるまい。(参考文献 Am J Clin Nutr. 2003 Dec;78(6):1128-34

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☆第30回 悪玉脂肪酸と風疹(平成16年2月9日更新)
ペルオキシソームの異常は、風疹ウイルス感染でもおこるのかもしれない先天性風疹症候群でペルオキシソームの異常が報告されている。組織中にペルオキシソーム異常のとき増加する極長鎖脂肪酸であるフィタン酸とヘキサコサン酸(悪玉脂肪酸)が増加していたとのことである。ペルオキシソームの異常はいろんなものでおこると思われるが、風疹などのウイルス感染、しかも胎内での感染があるとペルオキシソーム異常のおきるリスクが増すのかもしれない。(参考文献 J Pediatr.1990 Jan;116(1):88-94)
               
☆第29回 悪玉脂肪酸と炎症(平成16年2月2日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、炎症にも関与しているようだ。副腎白質ジストロフィーで、悪玉脂肪酸の蓄積と炎症に介在する因子(サイトカインなど)との関連を調べた研究がある。それによると、病変部位に炎症介在因子の発現が増加しているとの事で、悪玉脂肪酸の細胞膜の炎症反応に関与する部位への蓄積が、この遺伝性の疾患の病変を引き起こす引き金になっているのではないかと推測されている。動脈硬化でも発症機転に炎症反応が想定されており、興味深い結果である。(参考文献 Neurobiol Dis.2003 Dec;14(3):425-39.)
           
☆第28回 悪玉脂肪酸と酸化的ストレス(平成16年1月26日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、いろんな病気を引き起こすのではないかといわれる酸化的ストレスと関係があるようだ。酸化的ストレスがパーキンソン病などの神経変性疾患の発症や進展に関わっているといわれているが、副腎白質ジストロフィーにも関係していないかと考え、この病気における酸化的ストレスのいくつかのマーカーを測定した研究が最近報告されている。その結果は、予想された通り、酸化的ストレスが高じているとの事である。副腎白質ジストロフィーとは、言わずと知れた悪玉脂肪酸の代謝に支障があり、その蓄積がみられる遺伝性の疾患である。悪玉脂肪酸の代謝障害があり、それが増えると酸化的ストレスが高まり、結果として病気の進展に関与するという事であろう。(参考文献 Biochim Biophys Acta.2004 Jan 20;1688(1):16-32.)
     
☆第27回 悪玉脂肪酸とplasminogen activator inhibitor type 1(平成16年1月20更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、plasminogen activator inhibitor type 1(PAI-1)という糖尿病で増える因子とも関係があるようだ。遊離脂肪酸とともにPAI-1は、糖尿病患者の血中で増加する。PAI-1の血中のレベルが、脂肪酸の負荷でどう変わるかみた研究がある。いずれの脂肪酸の負荷でも、この物質の血中レベルは上昇したが、脂肪酸の炭素の数で比較した場合、炭素の数が多いほど、その上昇は低濃度の脂肪酸量で達成されていた。つまり、炭素の数の多い脂肪酸ほど、PAI-1の上昇をより誘発しやすいとの結果である。やはり悪玉脂肪酸は糖尿病と関係があるのであろう。(参考文献 Nutr Metab Cardiovasc Dis.2002 Dec;12(6):325-30)
          
☆第26回 悪玉脂肪酸と無セルロプラスミン血症(平成16年1月6日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、無セルロプラスミン血症という脳、肝臓、膵臓などの全身諸臓器に鉄の過剰沈着をきたす遺伝性の病気でも増える。セルロプラスミンは血清銅の約95%を結合する主要な銅輸送蛋白質であるが、その主たる生理作用は鉄イオンの酸化である。この病気では、過剰な鉄沈着に伴う酸化的ストレスの関与が注目されている。鉄などの遷移金属はフリーラジカルの産生に促進的に作用する事が知られているが、実際に本症患者の血清、髄液、脳組織中において脂質過酸化物の増加が確認されており、本症において酸化的ストレスが亢進していることを支持する根拠となっている。この病気でも悪玉脂肪酸が増えるとの報告があり、その原因は酸化的ストレスによってペルオキシソ―ムにおける悪玉脂肪酸の代謝に支障をきたすためであろうと推測されている。(参考文献 Neurology.1998 Jan;50(1):130-6)

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☆第25回 悪玉脂肪酸と男性ホルモン(平成15年12月29日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、ある種の男性ホルモンの代謝産物で減少するのか?男性ホルモンであるtestosterone(テストステロン)から代謝されてできる dihydrotestosterone と 3 alpha-diol は、悪玉脂肪酸を減らすとの報告がされている。testosterone自体には、そういう作用はないとのことである。女性では、悪玉脂肪酸のレベルが男性に比べて低く、女性ホルモンによる抑制作用が考えられているが、男性ホルモンの代謝物の中にも同様の作用を持つものがあるかもしれない。(参考文献 Neurosci Lett. 2000 Aug 4;289(2):139-42.)
           
☆第24回 悪玉脂肪酸と糖尿病(平成15年12月22日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、糖尿病を増悪させるのか?第8回で悪玉脂肪酸の属する飽和脂肪酸はインスリン感受性を低下させることを延べたが、インスリンを分泌する膵臓の細胞への毒性が、高血糖とある種の脂肪酸の相乗作用である事が報告されている。ある種の脂肪酸とは、もちろん飽和脂肪酸である。また多価不飽和脂肪酸であるリノール酸にも、程度は軽いが高血糖との相乗作用による毒性があるとの事である。一方、善玉脂肪酸でもある高級モノ不飽和脂肪酸では、その毒性は全くないとされている。高級モノ不飽和脂肪酸には、悪玉脂肪酸を減らす作用もあり、糖尿病では推奨されるべき脂肪酸であると思われる。(参考文献 Endocrinology.2003 Sep;144(9):4154-63.)
        
☆第23回 悪玉脂肪酸と痴呆(平成15年12年15日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、痴呆にも関与するのか?食事中にDHAが多いとボケにくいと言われるが、高級モノ不飽和脂肪酸でも同様の研究結果がでている。高級モノ不飽和脂肪酸を多く摂取すると、当然悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸は減少するので、そのことが痴呆の進展を抑制するのかもしれない。痴呆はアルツハイマー型にしろ、血管性にしろ、加齢が大きな要因であることは疑いようもなく、当然、老化関連脂肪酸であるヘキサコサン酸の関与は考慮すべきで、今後の研究課題であると思われる。(参考文献 J Neural Transm 2003;110(1):90-110)
       
☆第22回 悪玉脂肪酸とスフィンゴミエリン(その2)(平成15年12月8日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、発達にも老化にも関与するのか?悪玉脂肪酸はスフィンゴミエリンやその代謝産物であるセラミドなどのいわゆるスフィンゴ脂質に多い。ある文献によると、これらのスフィンゴ脂質は、誕生とともに増えて発達に貢献するが、ある時期(成人期以降)、あるレベルに達すると、今度は老化や死へのプロセスに関与する事になるとのことである。これはまさに悪玉脂肪酸について言える事かもしれない。(参考文献 Mechanisms of Ageing and Development 2001;122:895-908)
                         
☆第21回 悪玉脂肪酸とアルブミン(平成15年12月1日)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、アルブミンに結合しにくい。血漿中で遊離脂肪酸(リン脂質や中性脂肪に組み込まれない脂肪酸)として存在するには、アルブミンと結合することが必要である。アルブミンは血漿タンパクの一種で、遊離脂肪酸の運び屋である。このアルブミンの飽和脂肪酸の結合能を牛で調べた研究がある。それによると、飽和脂肪酸の炭素数が増えるにつれ、結合能は低下するとのことである。アルブミン一分子あたり、炭素数20では4〜5、炭素数22では3〜4、炭素数24で2、炭素数26のヘキサコサン酸ではたった一箇所しか結合部位がないとのこと。このこともヘキサコサン酸がリン脂質の形で細胞膜へ沈着しやすい理由の一つかもしれない。(参考文献 J Lipid Res.2002 Jul;43(7):1000-10)

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☆第20回 悪玉脂肪酸と酸化LDL(平成15年11月22日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、血漿中のLDL(低比重リポ蛋白)の酸化を促進するのか?悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸の蓄積する病気、副腎白質ジストロフィーの患者さんの血漿中のLDLは、健常者にくらべ酸化されやすいとの結果が報告されている。副腎白質ジストロフィーでみられる唯一の生化学異常が極長鎖飽和脂肪酸の蓄積である。とすれば、極長鎖飽和脂肪酸の蓄積がLDLの酸化を促進していることになる。動脈硬化の原因として、悪玉コレステロールが問題とされているが、悪玉コレステロールとはLDLコレステロール、特に酸化など変性したLDLコレステロールのことである。悪玉脂肪酸は悪玉コレステロールを増やす作用をもっているのかもしれない。(参考文献 Mol Genet Metab 2000 Dec;71(4):651-655)
       
☆第19回 悪玉脂肪酸とスフィンゴミエリン(平成15年11月18日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、リン脂質の中ではスフィンゴミエリンに多く含まれる。リン脂質は細胞膜の重要な構成成分であり、主なものはフォスファチジルコリン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノーラミン(いずれもグリセロリン脂質)とスフィンゴミエリンである。そして悪玉脂肪酸の大半はスフィンゴミエリンにくっついている。さて血漿ではどうか?悪玉脂肪酸で遊離の脂肪酸としてアルブミンにくっつけるのはわずかであり、やはりスフィンゴミエリンを筆頭とするリン脂質にくっつくしかないわけである。つまり悪玉脂肪酸の主な運び屋は、スフィンゴミエリンということになる。最近の文献では、血漿中のスフィンゴミエリンが冠動脈疾患(心筋梗塞など)の患者では健常者に比べ有意に多いとの報告がみられる。これは冠動脈疾患の患者では血漿中の悪玉脂肪酸が増えている事を示唆する知見である。(参考文献 Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000 Dec:20(21):2614-2618)
         
☆第18回 悪玉脂肪酸情報(平成15年11月10日更新)

悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、血管内皮のNOS(一酸化窒素合成酵素)を低下させるのか?一酸化窒素(NO)は、血管内皮細胞のNOSによって合成され、血管拡張、抗動脈硬化作用を発揮すると言われている。最近の研究報告によると、ペルオキシソ―ム病では、内皮細胞NOSが低下しているとのことである。ペルオキシソ―ム病では、極長鎖飽和脂肪酸(悪玉脂肪酸)の蓄積をきたしており(特に性染色体劣勢遺伝の副腎白質ジストロフィーでは極長鎖飽和脂肪酸の増加のみが代謝面での唯一の異常である)、極長鎖脂肪酸の蓄積がNOSの低下、さらにはNOの低下を引き起こす可能性を示唆する知見と思われる。ちなみに、血管内皮で産生されたNOは、血管拡張、血小板凝集抑制、平滑筋増殖抑制、白血球接着抑制、活性酵素産生抑制などの作用を持ち、血管内皮機能障害を防ぎ、動脈硬化を抑制すると言われている。(参考文献 Nitric Oxide 2001 Jun;5(3):213-218)

          
☆第17回 悪玉脂肪酸と善玉コレステロール(平成15年11月1日更新)

悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)と善玉コレステロール(HDLコレステロール)は同じ乗り物で運ばれているのではないか?悪玉脂肪酸は、血漿中では大部分がリン脂質分画に存在する。そして血漿中のリン脂質の大半はリポ蛋白の中の高比重リポ蛋白(HDL)に含まれている。末梢組織細胞の余分なコレステロールはHDLによって引き抜かれ、肝臓の細胞のペルオキシソームに運ばれ、胆汁酸に変換されるか、コレステロールのまま胆汁中に排泄される。悪玉脂肪酸も同様にペルオキシソ―ムでβ酸化によって処理される。つまりHDLはコレステロールだけではなく、悪玉脂肪酸も処理のために運ぶ機能を担っているのではないかと思われる。(参考文献 女子栄養大学:高脂血症の人の食事)

                            
☆第16回 悪玉脂肪酸とお酒(平成15年10月27日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、お酒を飲みすぎると増える。悪玉脂肪酸は、アルコール中毒患者の細胞膜では増えているとの報告がある。アルコールに悪玉脂肪酸が多いわけではない。アルコールの度を過ぎた摂取を続けるとフリーラジカルが発生し、それによってペルオキシソームの悪玉脂肪酸のβ酸化(これによって処理されている)が障害され、悪玉脂肪酸が増えるのではと推測されている。悪玉脂肪酸を体内に増やさないためには、お酒もほどほどにすべしとのことであろう。(参考文献Alcohol Clin Exp Res 1998;22(3suppl):103s-107s)

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☆第15回 悪玉脂肪酸の多い食べ物は?(平成15年10月20日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は、ナッツ類、植物の種に多い。悪玉脂肪酸を体内に増やさないためには、それを多く含む食物をなるべくさけるようにしたいものである。悪玉脂肪酸の含有量の多いものとして文献に記載されているのは、前記の如く、ナッツ類や植物の種であり、特にピーナッツに多いとの特記がある。しかし、それらのものを全く食べないのは困難である。悪玉脂肪酸対策には、やはり高級モノ不飽和脂肪酸の摂取を心がけるのが一番ではないかと思われる。(参考文献 J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo)1988;34(6):633-639)
        
 ☆第14回 悪玉脂肪酸と魚(平成15年10月14日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)対策に、魚を食べるとしたら、ししゃもがベストか?悪玉脂肪酸を減らす作用を持つ高級モノ不飽和脂肪酸が多いのは、タラ肝油とサメ肝油と言われている。では、魚として食べるとしたら、何がベストか?東京水産大学 和田教授は、高級モノ不飽和脂肪酸の多い魚としてカペリンを推奨されている。和田教授らの研究によると、ゴンドイン酸などの高級モノ不飽和脂肪酸の割合が総脂肪酸の50%を超える。カペリンとは、市場で「ししゃも」として売られているものの大半である。そして、子持ちのメスに限らず、オスでも十分の含有率とのこと。カペリン油は、将来の動脈硬化予防の機能性食品素材として期待されている。(2003年 日本動脈硬化学会より)
               
☆第13回 悪玉脂肪酸とWHHLラビット(平成15年10月8日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は下等動物には少ないようである。WHHLラビットはLDL受容体を欠損している動物であり、そのためLDLコレステロールが異常高値となることが知られている。森永乳業栄養科学研究所グル―プの研究によれば、悪玉脂肪酸を減らす作用のあるタラ肝油を投与すると、このラビットでは人と同様にHDLコレステロールは増え、LDLコレステロールは減少した。しかしながら、悪玉脂肪酸は微量のため解析不能であった。マウスの場合も同様であるが、下等動物では悪玉脂肪酸の量が細胞膜では極端に少ない(血漿中ではヒトと同レベルであるが)。悪玉脂肪酸は、LDL受容体欠損などの特殊な原因でおこる動脈硬化ではなく、ヒトで普遍的におこる動脈硬化の原因である可能性が高い。(2003年 日本動脈硬化学会より)
                
☆第12回 悪玉脂肪酸と死の四重奏(平成15年10月2日更新)
悪玉脂肪酸ヘキサコサン酸(C26:0)は死の四重奏と関連がある事が明らかにされた。死の四重奏とは「肥満」「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」の四つの動脈硬化危険因子の事である。この危険因子が増えるほど、心筋梗塞などの動脈硬化でおこる重篤なイベントの発生頻度が高まると言われている。明治生命の塚本浩介医師らの研究グループは、3000人以上を対象に検討した結果、どの年齢層でもこれらの危険因子の数が増えるほど、赤血球膜中のヘキサコサン酸の値が高くなる事を明らかにした。この事は、赤血球膜ヘキサコサン酸が高い人ほど、心筋梗塞や脳梗塞が起こり易い事を示唆している。赤血球膜ヘキサコサン酸は、動脈硬化関連の危険因子であり、新しいマーカーとなりうる可能性が高い。(2003年 日本動脈硬化学会より)
                   
☆第11回 悪玉脂肪酸と免疫(平成15年3月25日更新)
悪玉脂肪酸が増えると免疫能が低下するようである。悪玉脂肪酸の増える遺伝性の疾患、副腎白質ジストロフィーでは、ナチュラルキラー細胞活性が低下していることが、2002年の日本神経学会総会で発表されている(当院の小池文彦内科部長より)。副腎白質ジストロフィーでみられる唯一の生化学的異常である悪玉脂肪酸の増加が原因ではないかと思われる。未発表のデータであるが、悪玉脂肪酸を減らす善玉脂肪酸の摂取でナチュラルキラー細胞活性の上昇が観察されている。これも、前述の可能性を示唆するものである。

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☆第10回 悪玉脂肪酸と悪玉コレステロール(平成15年3月18日更新)
「食事を、悪玉脂肪酸の属する飽和脂肪酸の多いものから、モノ不飽和脂肪酸(善玉脂肪酸)の多いものに替えると、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が有意に低下する」と、イタリアの研究グループから報告がなされている。この研究は、162人の健康な人を対象に行なわれたものである。一般に健康に良いとされるn-3系の脂肪酸(リノレン酸、EPA、DHAなど)を補助的に与えると、トリグリセリドは減るが、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが増加するとの結果も報告されている。(参考文献 Atherosclerosis 2003;167(1):149-158)
       
☆第9回 悪玉脂肪酸と血圧(平成15年3月11日更新)
「食事の中の悪玉脂肪酸の属する飽和脂肪酸を減らし、モノ不飽和脂肪酸(善玉脂肪酸)を増やすと、拡張期血圧が有意に低下する」と、イタリアの研究グループから報告がなされている。この結果は、モノ不飽和脂肪酸が、高血圧を改善する事を示唆している。悪玉脂肪酸を減らす善玉脂肪酸は、生活習慣病予防にいろんな面で役立つようである。(参考文献 Ann NY Acad Sci 2002;967:329-335)
        
☆第8回 悪玉脂肪酸とインスリン感受性(平成15年3月4日更新)
悪玉脂肪酸の属する飽和脂肪酸は、インスリン感受性を低下させる」と、オックスフォード大学の研究グループにより報告がなされている。健康な更年期の女性10人で、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸(n-3とn-6)、モノ不飽和脂肪酸の4つの群のインスリン感受性への影響をみたものである。結果は飽和脂肪酸が最もインスリン感受性を低下させ、次が多価不飽和脂肪酸、最もインスリン感受性を低下させないものがモノ不飽和脂肪酸であった。結局は、食事中の脂肪酸中、飽和脂肪酸が多いと耐糖能が低下に向かう(ひどくなると糖尿病)という事である。逆に悪玉脂肪酸低下作用を持つモノ不飽和脂肪酸(善玉脂肪酸)は、その対極にあるもので、糖尿病の人にとって好ましい脂肪酸といえるようである。(参考文献 Br J Nutr 2002;88(6):635-640)
           
☆第7回 悪玉脂肪酸と心理状態(平成15年2月25日更新)
悪玉脂肪酸は心理状態とも関連があるようである。杏林大学の研究グループによりなされた研究であるが、大学生80人(男25人、女55人)において、心理学検査と血清極長鎖飽和脂肪酸測定が行われ、心理状態と極長鎖飽和脂肪酸の関連の有無が検討された。結果は、女子大生において、不安及び敵意性と極長鎖飽和脂肪酸との相関がみられている。悪玉脂肪酸が、不安とか敵意を持つ心理状態のとき増えるという事である。これは精神的ストレスで、悪玉脂肪酸を減らす代謝能が低下する可能性を示唆する結果である。2002年の日本脂質栄養学会(第11回大会)で報告されている。
                 
☆第6回 悪玉脂肪酸と肥満(平成15年2月18日更新)
悪玉脂肪酸と肥満との関連は、成人だけでなく、小児でもみられるようである。つまり、肥満児には悪玉脂肪酸の増加がみられるという事である。この報告は、2002年の日本小児消化器肝臓学会にてされている。悪玉脂肪酸がなぜ肥満で増えるのかは、まだ解明されていないが、肥満でおこるいろんな合併症を引き起こす原因の一つではないかと考えられている。

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☆第5回 悪玉脂肪酸とコレステロール(平成15年2月10日更新)

悪玉脂肪酸を減らす作用が、コレステロールを減らす作用を持つ薬剤(ロバスタチンなど)でもみられます。何故、そういった事がおこるのか?一つの説明として、コレステロールを調節している遺伝子を介した悪玉脂肪酸を減らすメカニズムが提唱されています。コレステロールが減ると、コレステロールの調節遺伝子が活性化され、同時に悪玉脂肪酸を減らす代謝も賦活されるというものです。(参考文献 Hum Mol Genet 11(22):2701-2708,2002)
                       

☆第4回 悪玉脂肪酸と魚油(平成15年2月3日更新)

悪玉脂肪酸を減らす高級モノ不飽和脂肪酸の供給源として、第一に魚油を挙げねばなりません。しかし、魚油といっても色々です。また魚油には、過剰に取り過ぎると問題のあるビタミンA、Dなども含まれています。それらを除いた魚油(たら肝油)の摂取試験のデータが2001年の日本成人病学会と日本栄養食科学会で発表されています。それによると、1日5gの摂取4週で、悪玉脂肪酸は有意に減少し、摂取8週では10%以上の減少がみられています。同時に善玉コレステロールであるHDLコレステロールは有意に増加し、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールは有意に減少していました。悪玉脂肪酸叩きの食品として有望です。
                            
☆第3回 悪玉脂肪酸と高級モノ不飽和脂肪酸(平成15年1月28日更新)
悪玉脂肪酸も天然の脂肪酸ですが、天然の脂肪酸の中に悪玉脂肪酸を減らす作用のあるものが知られています。それが、高級モノ不飽和脂肪酸です。高級モノ不飽和脂肪酸は悪玉脂肪酸の合成を抑制します。高級モノ不飽和脂肪酸には、「オレイン酸」「ゴンドイン酸」「エルカ酸」などがあり、いずれも悪玉脂肪酸を減らしますが、作用の強いのは「ゴンドイン酸」と「エルカ酸」です。副作用などを考慮した総合的評価からは、「ゴンドイン酸」が悪玉脂肪酸対策にはベストかと思われます。(参考文献 J Neurol Sci 103(2):188,1991)
                             
☆第2回 悪玉脂肪酸と薄毛(平成15年1月21日更新)
悪玉脂肪酸(ヘキサコサン酸)の増加がみられる遺伝子の病気の一つに、副腎白質ジストロフィーがあります。この病気は、X染色体に異常があり、一般に男性だけに症状がでるものです。この病気の大半は子供のとき発病し、成人前に亡くなりますが、成人以降に発病する事があります。成人以降に発病した患者さん方ののほとんどで頭の毛が薄くなります。この病気での頭髪の異常を調べた欧米の学者がいますが、結論は『この病気の頭髪の異常は健常者にみられる男性型脱毛と同じだ』としています。では原因は何か?この副腎白質ジストロフィーでの生化学的異常は、悪玉脂肪酸の増加だけです。ですから、原因は悪玉脂肪酸と言わざるを得ません。この患者さん方に悪玉脂肪酸を減らすモノ不飽和脂肪酸の豊富な油を飲んでもらうと。悪玉脂肪酸の減少とともに頭髪の異常の改善がみられます。このことも、悪玉脂肪酸が、この病気での薄毛の原因であり、また老化で起こる脱毛の原因の一つである可能性を強く示唆するものではないかと思われます。(参考文献 Dermatology 200(3):213,2000)
                                   
☆第1回 悪玉脂肪酸と性(平成15年1月14日更新)
悪玉脂肪酸(ヘキサコサン酸)は加齢と共に増加しますが、それには男女差があります。すべての年齢層で、男性に比べて女性では低い値を示しています。そして、それは30歳代、40歳代で顕著となり、50歳代、つまり更年期以降は男性に近付いていきます。これは女性ホルモンが悪玉脂肪酸の増加を抑えていると思われます。これは血漿コレステロールなどでも、また心筋梗塞などの動脈硬化と関係のある疾患の頻度においても同じ事が言われています。これらの事から、出産の可能性のある女性は老化の進展がホルモンによって抑えられている事が推測出来ます。(参考文献 Atherosclerosis 153:169-173,2000)
              
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